アトピー性皮膚炎とステロイド
| アトピー性皮膚炎 | ||
| アトピー性皮膚炎 |
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| アトピー性皮膚炎とステロイド治療に対する不安 | |
| アトピー性皮膚炎の病態 | |
皮膚の表面には角層と言うバリア機構があります。角層はちょうど皮膚を守るレンガの壁のようなもので、レンガ(角質細胞)をセメント(フィラグリンや細胞間脂質)で接着しています。ところがアトピー性皮膚炎ではこのセメントがあまり作られません。するとレンガの壁がきちんと機能しないため、水分が漏失して皮膚が乾燥するとともに、外界からハウスダストやダニの死骸が皮膚に進入して皮膚炎を生じるのです。更にこうした乾燥した皮膚の細胞からは神経成長因子という物質が分泌され通常は表皮の下に留まる知覚神経が、表皮の中に進入し皮膚の表面まで上がってきます。その結果非常に敏感にかゆみを感じる皮膚になってしまうのです。 以上のような「バリア機能の減弱・喪失という皮膚構造上の異常」に加えて「皮膚の細胞と免疫細胞が互いに関与する免疫の異常」が加わります。更に最近では「バリア機能の異常」が「皮膚の免疫の異常」により生じ準備されることが指摘され、2つの異常は表裏一体の関係であることが分かってきました。こうした状態に外部からいろいろな刺激が加わることで発病・増悪すると考えられています。アトピー性皮膚炎は70-80%を占める「バリア機能の異常に起因するタイプ」と少数の「バリア機能の異常のないタイプ」に分類されます。 アトピーでは強い痒みがあり、つい掻いてしまいます。ひっかいた皮膚は、もとより少ないバリア機能がさらに傷つきアレルギーを起こす物質(抗原・アレルゲン)が入りやすい状態になります。 そして掻くと皮膚の細胞からさまざまな炎症を悪化させる物質(サイトカイン)が放出され、皮膚炎が悪化し痒みが増します。強いかゆみは、基本的には皮膚炎があるために生じます。アトピーでは一見正常に見える皮膚でもドライスキンの状態にあります。 よって治療の第一はまずバリアの補修です。もとよりセメントがあまり作られないわけですから、これを外部から補う必要があります。実際には保湿剤を広範囲に塗っていくことが必須です。これを行うことにより表皮の水分が漏失しなくなり、バリア機能が改善されます。 そして赤みがなく一見カサカサしているだけの皮膚でもかゆみのあるところは、アトピー症状を引き起こす免疫細胞がたくさん集まり、細胞レベルでは炎症があるのです。 ですから、かゆみをコントロールするためには保湿するとともに炎症を抑えることが最も大切です。炎症の治療を充分しないと、かゆみはなかなかおさまりません。以上の理由で治療には副腎皮質ホルモンや免疫抑制薬の外用薬を使用する必要があります。 |
| アトピー性皮膚炎治療の目的 | |
| アトピー性皮膚炎の治療は、まず患者さんの個人それぞれの状態にあった治療目標(およそのゴール)を決めることから始まります。皮膚科医の考える治療の目標は「日常生活に支障なく、急に悪化することがないように、たとえ悪化してもそれが持続しないように」と言う状態です。 完璧を目指すのではありません。完璧を目指すと、実際に治療した分良くなっていても、いつまでも「まだ治らない」と感じて無力感とフラストレーションが生じます。 アトピー性皮膚炎の治療は対症療法(症状を抑える治療)です。根本原因を治さないで対症療法だけをしても、意味がないとお考えの方もおられます。アトピー性皮膚炎の病態(成り立ち)は多くのことが分かってきたとはとはいえ、免疫学の進歩とともに更に新しい知見が現れ、全貌の解明は遠い先の話です。しかしアトピー性皮膚炎という病気は今私たちの前にあり、実際の治療が必要です。 治療のひとつとして用いるステロイド外用薬は、少なくとも50年以上の使用経験と知識の蓄積があり、効果と副作用は充分理解されています。その意味では安全に使用できる薬のひとつです。通常のステロイド外用薬の使用量では副作用を過度に心配する必要はありません。 大切なことはステロイド外用薬、免疫抑制の外用薬、保湿外用薬を上手に使って症状をコントロールし、かゆみのない落ち着いた状態を維持することです。 |
| ステロイド外用剤の使い方 | |
| ステロイドはもともと腎臓の上にある副腎という器官でつくられるホルモンです。これを人工的に合成したのがステロイド薬で、炎症を抑える作用があります。この薬は1952年から使用されている、長い歴史を持つ薬です。ステロイドを皮膚に塗ると、炎症細胞の活性化を抑えるだけでなく、皮膚の細胞の活性化を抑えます。よってきわめて効果的に皮膚の炎症を抑え、結果的にかゆみ神経の活性化を抑えかゆみがなくなります。 ステロイドの注射や飲み薬は全身に作用するため全身性の副作用がでます。しかし塗り薬は皮膚の患部に直接作用するため、皮膚から血中に入る量はわずかで、通常の使用量では全身性の副作用が問題になることはありませんし、体の中に蓄積することもなく、妊娠・授乳中でも問題なく使用できます。 塗り薬で問題になるのは、塗った局所に対するもので軽い副作用と言えます。そしてほとんどの局所の副作用はステロイド外用薬の使用量が少なくなると元にもどります。 局所副作用
ステロイド外用薬は効果の強さからストロンゲストstrongest・I群からウィークweak・V群まで5段階に分けられ、炎症の強さ・炎症の部位・年齢などによって使うステロイドが決められます。部位や年齢を考慮するのは部位や年齢によってステロイドの吸収率が大きく異なるためです。 塗り方ですが、5gチューブ1本で手のひら20枚の広さに塗れることを覚えておきましょう(フィンガーチップユニットfinger tip unit FTPと言います。1FTPが手のひら2枚分の広さ)。 ちなみに全身くまなく塗る場合、乳児では10g(5g×2本)、幼小児では15g(5g×3本)、思春期・成人では25g(5g×5本)必要です。 Very strong classのステロイド外用剤の長期使用試験結果から、通常の成人患者で充分量である1日5gないし10g程度の初期外用量で開始し、症状にあわせて漸減する使用法であれば3ヶ月間使用しても、一過性で可逆性の副腎機能抑制は生じるものの、不加逆性の全身的副作用は生じない報告されています。ちなみにリンデロンV軟膏で10gの密封療法、20gの単純塗布が副腎機能抑制を生じうる1日外用量とされています。 ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 免疫抑制剤(プロトピック軟膏)の特徴と使い方 | |
| プロトピックはステロイドより炎症を抑える力が強く、ステロイド外用剤がもつ副作用(皮膚の萎縮、血管拡張、多毛)がない日本で開発された画期的な薬で、世界中でアトピー性皮膚炎の救世主として使われています。ただし2つ短所があります。ひとつは皮膚への吸収がステロイドより悪いのが欠点です。顔や首など皮膚の薄いところはよく浸透しますが、手足や胴体など吸収が悪いのでステロイドの方が効果的です。二つ目は塗ったところがヒリヒリしたり痒くなるのが問題点です。3日ほど使い続けると慣れてヒリヒリしなくなります。しかし10人に1人くらいどうしても使えない患者さんがおられます。 実際の使い方はステロイドと同じでフィンガーチップユニットFTUで塗る量を決めます。 成人用(16歳以上)と小児用があり、2歳未満の乳児には使用できません。使用量に制限があり、体重10kgあたり1回1g以内となっています。1日2回まで塗ることができますから、体重10kgあたり1日2gまで使えます。つまり体重50kgならば1回5gを1日2回塗れるので、1日10gまで使用できます。 この使用量を守れば、説明書の注意に書いてあるリンパ腫の恐れはありません。また日光への注意も普通の生活では問題になりません。海水浴などの場合はその日塗るのを休めば充分です。 |
| ステロイド・免疫抑制剤(プロトピック)治療の実際 | |
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| 顔面の皮膚炎 | |
| 顔のひどい症状はどうしても治療が必要です。きちんと治療をしないとアトピー性白内障や網膜剥離の原因となります。よくステロイド外用剤を顔に使用するとステロイド性の白内障が生じると思われている方がおられますが、これは間違いです。 |
| 保湿外用薬の必要性と使い方およびその限界 | |
| アトピー性皮膚炎では正常に見えてもドライスキンが存在します。できるだけ広い範囲に保湿剤をまんべんなく塗りましょう。そして赤みや皮膚がゴワゴワしているところがあれば、その上にステロイドや免疫抑制剤の外用剤を塗ります。乾燥した皮膚に直接ステロイドや免疫抑制剤の外用剤を塗っても、砂漠に水をまくようなものでいくら塗っても塗り広がりません。また皮膚炎がないからといって保湿薬を止めてしまうと、どうしても皮膚は乾燥しがちになり、さまざまな刺激に敏感に反応してすぐに、皮膚炎を再発してしまいます。1日1回入浴後、まだ皮膚に水気がある状態のときが最良です。霧吹きをして塗るのも効果的です。保湿外用薬には一旦悪化した皮膚炎を抑える力はありません。赤くなったところ・ゴワゴワ硬いところ・かゆいところにはステロイドを再開しましょう。一時期皮膚炎がおさまっても、皮膚炎を起こしやすい体質そのものはなかなか変わりません。皮膚炎が悪化したら保湿外用薬だけに頼らず、迷わずステロイドまたはプロトピック外用薬をぬりましょう。 |
| 理解に有用なサイト | |
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以上のような「バリア機能の減弱・喪失という皮膚構造上の異常」に加えて「皮膚の細胞と免疫細胞が互いに関与する免疫の異常」が加わります。更に最近では「バリア機能の異常」が「皮膚の免疫の異常」により生じ準備されることが指摘され、2つの異常は表裏一体の関係であることが分かってきました。こうした状態に外部からいろいろな刺激が加わることで発病・増悪すると考えられています。











